2013年7月15日月曜日

カリマバード 1

フンザ観光の中心地、カリマバード。
その美しい渓谷は桃源郷とも呼ばれ、多くの旅行者、登山者でにぎわう。
日本人にも人気の有名な宿にチェック・インした。

しかし、客は僕一人だけ。
村全体を見ても、外国人旅行者はごくごくわずかで、閑散としている。

それもそのはず、6月23日、この地域の登山に来ていた外国人9人とパキスタン人2人が殺されるという事件が起きたからだ。
タリバンなど複数の組織が、「敵である外国人を狙った」と犯行声明を出した。
テロとは無縁の平和なフンザでこういった事件は初めてのことで、現地でも衝撃が走ったようだ。
この事件が起きた時、僕は中国のカシュガルにいたのだが、そこでもおおいに話題になった。

そんなわけで、フンザから旅行者が消え去ってしまった。

僕はこの事件を軽く見ているわけではないが、こういう事件がまた起こりうると推測するのも個人の判断、一度起こったからといってまた起きるとは限らないと推測するのも個人の判断、自分は後者の立場をとった。
話のレベルが違うかもしれないが、今、外国人と話をしてみると、日本という国は放射能にさらされた危険な国とみなしている人が少なくない。
それは事実なのだが、それを理由に日本への渡航をやめるとしたらおかしなものだ。
僕は、耳に入ってきたニュースだけでパキスタン行きをやめたところで、危険を回避したことになるだろうか。
パキスタンを避けて別のルートをとったとしても(陸路だと別ルートはほぼ存在しないのだが)、自分の旅の危険度、安全度は少しも変わらない気がする。
なんだかよくわからない文章になってしまったが、要するにこの事件では僕の危険センサーは反応しなかった。

宿は1泊250ルピー(248円)。
バルコニーからの眺め。


水道は川と同じ色の濁り水。
お湯は一応出るが、電気でタンクの水を温めるので、停電するとしばらくお湯は出ない。
そしてとても頻繁に停電する。



インフラは整備されておらず、スーパーもATMもなく、不便が多い。
にもかかわらず、ここの人たちからは貧しさがまったく感じられない。
知性と品性さえ漂う。
犯罪の匂いは皆無。

部屋には鍵がない。
宿のレストランやバルコニーには、現地人も他の宿の宿泊者も自由に出入りできる。
でも僕の私物が紛失することはない。

宿のレストランは基本的にツケで、食後にノートにメモをする。
僕が「いくらと書けばいい?」と聞くと「いくらでもいい」と言う。
「じゃあ250ルピー(248円)。」と書くと「それじゃあ多すぎる。」と言われる。
ネットカフェでは、1000ルピー札で支払おうとするとお釣りがないので「今日は払わなくていいから明日また来てくれ」と言われる。
彼は僕の名前も身元も何も知らないし、明日また来るという保証もない。

こういう国は初めてだ。

しかし、今まで僕は何人かの単独女性旅行者と出会ってきたが、彼女たちから、イスラム圏での不快な体験談を数多く聞いた。
もともとイスラムでは、女性は社会的地位が低い上に、異教徒の女には何をしてもいいという風潮があるようで、セクハラも絶えないようだ。
女性旅行者と男性旅行者とでは、まったく別次元の旅行経験をしているのかもしれない。
だから、ここパキスタンを手放しで絶賛するのは早計かもしれない。

旅行者がいなくなってしまったことで現地の人にはさびしさが漂っているが、ともあれここは平和だ。



































クリケットやってる。


桃源郷と呼ぶには、鉄塔や電線が景観を損ねている。
そのくせ停電する。







ウルタル峰(第1峰7329m、第2峰7388m)












そしてやはり超親日。









歩いていると、しきりに「コンニチハ!」と日本語であいさつされる。



















もともと日本の経済援助があったこと、難関といわれていたウルタル峰が日本の登山隊によって初登頂されたこと、ウルタル峰で遭難死した日本の登山家の奥さんがカリマバードに学校をたてたこと、など日本とのつながりはいろいろあるようだ。

チャパティをちぎって具を包んで食べる。

かれらは器用に右手だけでやるが、僕は両手を使う。

やっぱり具は辛い。










フンザウォーター。


地元の人が「これはクリーンだ」って言うんだから大丈夫だろう。
飲んでみると、クセのないすっきりした味。
ちなみに水道もトイレの水もこの色。

やっぱり日本人いた!

旅行者のナオさんと、この地域の言語を研究している学者のノボルさん。



うれしいミソスープ!


ノボルさんは、何年も前からたびたび仕事でフンザを訪れていて、ウルドゥー語だけでなく、この地域の村でしか話されないローカル言語もできるので、ここでは有名人。
この辺は川の向こう側に行っただけで言語や宗派が変わったり、フンザはイスマーイール派が多数派だが村によってはシーア派だったり、インドからヨーロッパに移動したロマの一部がこの付近でとどまって今も残っていたり、などふつうじゃ聞けないローカル情報をたくさん教わった。
旅をしていて人と話して学ぶことって、意外に根拠があやふやだったり先入観に満ちていたりするものだが、ノボルさんのようにきちんと裏付けされた知識を持った人と話ができるのはレアなことで、非常に勉強になった。


Gilgit, Pakistan



2 件のコメント:

  1. はじめまして。私もあさってから中国からフンザへいくもので、こちらのサイトにたどり着きました。
    写真もきれいだし、自転車の旅だからか、ほかのブログと違っていいなあと感心しました。これぞ旅って感じです。
    やはり例の事件のせいでフンザは旅行者少ないようですね。
    宿泊した宿はなんという宿ですか?

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    1. はじめまして、ありがとうございます。
      返信遅すぎたかもしれません、すみません。
      僕はカリマバードではHaidar Innに滞在しました。
      1泊250ルピー。
      お湯が出る部屋はひとつしかないので、チェックインの際に確認した方がいいと思います。
      周辺には他にも日本人に人気の宿が複数あり、どこも大差ないと思いますが、お湯がまったく出ないところも多いようです。
      Haidar Innは上の階にネットカフェがあるので便利です。
      僕は1週間滞在しましたが、最後の方は旅行者をちらほらと見かけたので、今はまた状況が変わって旅行者も増えているかもしれません。
      いずれにしてもすばらしいところです。
      よい旅を!

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