アメリカと真っ向から敵対している国だが、かつては親密な関係だった。
第2次大戦後、アメリカはイランの石油に目を付けて開発を支援し、イラン国内は西洋化が進められた。
しかし、1979年、復古的なイスラム国家を望む人々が革命を起こした。
国王を追放し、ルーホッラー・ホメイニ師を最高指導者に迎え、イラン・イスラム共和国が樹立した。
ホメイニ師を支持する学生が首都テヘランのアメリカ大使館を占拠し、大使館員を人質にたてこもった。
これを機にアメリカは国交を断絶し、レーガン大統領はイランをテロ国家に指定、ブッシュ大統領はイラン、イラク、北朝鮮の三国を「悪の枢軸国」と表現した。
中東には、アメリカのバックアップで圧倒的な軍事力を誇るイスラエルがある。
イスラエルはすでに核兵器を保有し、中東イスラム諸国に対して無言の圧力をかけてきた。
反米同様に反イスラエルを徹底するイランは、イスラエルに対抗するために核開発を進めている。
イランの核開発は国際社会から批判の的となっているが、これは西側諸国の考え押し付けで、イスラエルの核保有は見て見ぬふりをしてイランだけは許さない、というのは公平ではない。
核拡散防止条約は、すでに核兵器を保有してしまっている米露英仏中は保有し続けることを認め、他の国が新たに製造することは許さない、という西側に都合のいい不平等条約だ。
また、加盟していないインド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮に対しては何も言えない。
イランは、世界最大の産油地帯であるペルシャ湾の入り口、ホルムズ海峡の鍵を握っている。
もしここが封鎖されれば、世界経済が大混乱に陥ることは必至である。
こういった脅威があるため、国際社会もイランに制裁を加えることには慎重になっている。
日本も、輸入している原油の8割がこの海峡を通過しているので、他人事ではいられない。
隣国イラクがアメリカにやられたことも影響してか、イランはIAEA(国際原子力機関)からの中止要請も無視し、ウランの濃縮を続けている。
1988年、イギリスの作家がムハンマドを題材にした「悪魔の詩」を出版したが、これはイスラムへの冒涜であるとされ、ホメイニ師はこの作家に死刑を宣告した。
作家は警察に保護されたが、日本語版の訳者であった筑波大の助教授が何者かに殺された。
犯人はまだ捕まっていない。
ペルシャ人51%、アゼリー人25%、クルド人7%。他の中東イスラム圏とは違い、アラブ人国家ではない。
公用語はペルシャ語。アラビア文字を使い、アラビア語からの借用語も多い。
シーア派が90%。イスラム圏で唯一、スンニ派ではなくシーア派が多数派となる国。
隣国イラクとは宗派も民族も言語も異なり、フセインがシーア派を弾圧してきたこともあって、仲が悪い。
1980年、石油輸出の要所である国境をめぐってイラン・イラク戦争が勃発した。
1988年に停戦し、犠牲者は両国で100万人と推定されている。
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