シェトペ。
アクタウを離れると、ロシア系の人はあまりおらず、ほとんどの人がアジア系。
通りすがりのドライバーに、家に招かれてごちそうになった。
美しいカーペットが敷かれた部屋。
陽気に歓迎してくれたおじいさん。
民族衣装のおばあさん。
僕を完全無視する無愛想な若い娘。
おいしい食事。
意外に家電なんかは最新で、おじさんはスマホを使っていた。
ぜひとも写真を撮りたかったのだが、外と中の温度差でレンズの曇りがいつまでたっても取れず、残念ながら撮影不可能だった。
カメラは氷のように冷たくなっていた。
おじさんにニット帽をもらった。
今までも、 通りすがりの人から「帽子をかぶれ」と何度か注意された。
頭を暖めるなんて発想はなかったが、かぶってみると違うもんだ。
おじさんに、街で唯一のホテルまで案内してもらった。
英語で「HOTEL」と書かれた看板もなく、外国人旅行者には絶対わからない。
1泊3000テンゲ(1680円)のドミトリー。
高すぎ。
シャワーはひとつだけ、トイレは離れのボットン、もちろんWi-Fiなんかない。
でも、ルームメイトたちはフレンドリーで、言葉は通じ合えないけど楽しい時間をすごせた。
アクタウではカザフ人に対してあまりいい印象を持てなかったが、その後はやさしい人たちばかりで、心暖まる。
ちょっとしたツンデレ効果か。
市場で、防寒用にゴッツイ上着を買った。
13000テンゲ(7281円)と、ちょっと奮発してしまった。
保温性はありそうだが、耐久性はなさそうな感じ。
厚手の靴下も買った。
レストランでは、メニューがまったくわからないので、厨房まで連れて行ってもらって、実際につくっているものを見て、指でさして注文する。
なんかうどんが出てきた。
チャイは、ここではミルクを入れるのが主流のようだ。
ふつうはひとり一品だけ注文するようで、僕は値段もわからず適当にいくつか注文したら、総額1800テンゲ(1008円)。
高すぎだよ!
またキャリアがあああ!!!
こんな風に後ろにのけぞるように折れるのってレアだと思う。
次の街まで300kmあるので、水と食料をガッツリ積んでいたせいか。
やむをえずシェトペに戻り、また同じホテルでもう1泊することにして、荷物を置き、溶接屋を探した。
これまた荒っぽい溶接。
晴れた昼間なのに、洗濯物を外に干したら、1分もしないうちにすべてバリバリに凍ってしまった。
日中の最高気温も氷点下なので、外に干したら永遠に乾かない。
高いっつーのに、また同じレストランで。
おいしいんだ、これが。
さらにぐっと気温が下がった。
-15℃。
経験したことのない寒さ。
フード付きの上着を買ってよかった。
フードなしだと耳が痛すぎる。
タンクから水が漏れていたようだ。
なんて美しい。
どんな観光名所よりも、美しいと感じる。
なんてすばらしい、この世界。
やっぱり僕は、自転車旅行をやっていてよかった。
必死で働いて金を貯めて、たくさんの人に支えてもらって、はるばるアフリカからやってきて、その上で、この目に映る、この光景。
とてつもなく寒いけど、本当に幸せだ。
水はカチンコチンに凍ってしまって、飲めない。
炭酸飲料の方が融点が低く、スプライトはシャーベット状だがなんとか飲める。
電子機器が正常に作動しなくなった。
特にカメラは困ったもので、電源を入れて数秒すると「バッテリー残量がありません」という表示が出る。
この表示が出る前にシャッターを押せれば、撮影できる。
指もかじかむので、この辺から撮影が雑になっているかもしれない。
動画は撮れない。
僕の自転車のベルには方位磁針が付いているのだが、これも凍ってしまった。
小便をしたら、瞬時に凍った。
日中の最高気温も氷点下だから、この小便は来年の春までこのままなのか。
道路工事の人たちが歓迎してくれた。
アスファルトの熱で氷を溶かす。
ごちそうしてくれた!
魚のフライ、スパゲティ、サラダ、みかん、パン、チャイ。
かれらにとっても大事な食事のはずなのに。
夜が来た。
・・・大丈夫なのか?
上着買ったんだから、きっと大丈夫。
給水タンクは、いつもは下に置く時「ゴン」という音がするのに、「コン」と金属的な音がした。
とうとうスプライトもカチンコチンになってしまった。
どういうわけか、ガスコンロの火が異様に弱い。
ガス残量はたっぷりあるのに、まるで風前の灯だ。
もちろんここは高地ではないので酸素が足りないわけでもない。
なんでだろう?
このかすかな火でペットボトルの氷を20~30分かけてあぶって、ようやくコップ3分の1ほど飲めた。
調理はとてもできない。
道路工事の人にごちそうになっておいて、本当に助かった。
しかし歯も磨けない。
星空のすごいこと。
もう「満天」なんて言葉じゃ足りないぐらい、まるで人工的につくられた照明のように、派手に夜空を輝かせている。
最高レベルの重装備で、寝袋に入る。
凍死しませんように・・・
なんとか少し眠れたが、1~2時間で目が覚める。
-20℃。
なんて寒さだ。
上半身6枚、下半身4枚。
これ以上重ね着したら寝袋のチャックが閉まらなくなるぐらい、着込んでいる。
寝袋2枚と寝袋シーツ。
余った衣類は背中やケツの下に敷く。
それでも、容赦なく冷気が体に伝わってくる。
こんなに寒くても、体から蒸気を発している。
ふと寝袋シーツを見たら、濡れていた。
これも初めての現象で、いつもは濡れるなんてことはない。
起き上がって、なんでだろう? と考えてみて、もう一度振り返って寝袋シーツを見たら、 濡れた部分がもう凍っていた。
今夜は風が止み、静かだ。
これで強風だったり雪だったりしたらと思うと・・・
朝、目が覚めて、生きててよかった、とホッとする。
あの道路工事以降、未舗装になってしまった。
無人地帯に時々出現する、謎のモスク。
ボコボコ。
向かい風。
元気づけてくれた人たち。
熱いチャイもいただいた。
空気がキラキラと輝いている。
空気中の水分が凍っているのだろう。
これがダイヤモンドダストというやつか。
突如現れたレストラン。
砂漠のオアシスの反対はなんていうんだろう?
なんとここ、宿泊もできる!
1000テンゲ(560円)。
トイレは離れのボットン、シャワーなし、水も制限されている。
なんでもいい、暖かく眠れるなら。
未舗装無人地帯にホテルがあるなんて、まったく予想外。
助かった。
メシも最高。
950テンゲ(532円)。
ここで働いてるおばさんたち、親切で愛想良くて感じがいい。
ドアを開けると、外からの空気が瞬時に凝結して、白い煙のようになる。
冷凍庫を開けた時と同じ現象か。
この日は風が止まず、ずっと強風が吹き荒れた。
野宿だったら・・・
Nukus, Uzbekistan
2012年12月21日金曜日
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荒涼たる大地という感じか。
返信削除-20℃で野宿は危険じゃないか?
バナナで釘うったれ!
レストランが変わっても、なんだか食事が同じように見えるのは気のせいかな?
日本車が度々写っているのを見ると、世界的にも日本製品の評価が高いと判断できるね。
2012年がもう少しで終わる。
この辺が野宿の限界だと思う。
削除冬山用の装備でのぞめばもっといけるかもしれんが、それとはちょっと違うからね。
バナナ食べたら、たぶん舌に張り付いて取れなくなると思う。
日本車の評判はどこ行っても良いよ。
バイクもね。