ルームメイトのアランとトレジャーと。
ベルギー人のアランは、バイクで旅をしている。
幸い、僕と同じくフェリーでカザフスタンへ向かう。
旅客船ではなく貨物船に便乗するので、定期便でもなく、旅行者にわかりやすいシステムにもなっていない。
チケット売り場を下見に行くというので、僕も同行させてもらった。
東と西の狭間を行き来する船を探し求めて、黒白黄の3人がさまよう。
たしかに、こんなところは誰かに教えてもらわないとわからないな。
やがて「KASSA」と書かれた地味な小屋が現れた。
ここのおばさんがチケットを売ってくれる。
おばさんは神出鬼没だそうで、運悪く不在の場合はチケットを買えない。
16時前後にはだいたいいる、との情報。
チケットは95マナト(9977円)だが、バイクを積むのにUS$220もかかるらしい。
アランはなんとか値引きさせようと交渉を試みたが、相手は交渉する気などさらさらない様子。
そもそも英語が通じない。
自転車はUS$20だそうだ。
ちょっと落ち込んで、撤退。
コンゴ人のトレジャー。
フランス語で「宝物」という意味の名前だが、発音が難しいので僕は「トレジャー」と呼んでいる。
トレジャーはベルギーの大学に通っているが、今はバケーションで各地を旅行している。
でも、どこへ行くにもビザが問題になるそうだ。
欧米人や日本人がビザフリーで簡単に行けるヨーロッパやトルコなどにも、彼はいちいちビザが必要になる。
ブルガリアビザの発行は、断られたらしい。
彼は裕福な家庭の育ちでお金には困っていないが、アフリカ国籍というだけで入国を断られる。
(まあ、僕もアフリカの住民でないという理由でエチオピアビザの発行を断られたことがあるのだが)
イスラム国らしからず、昼間からカップルたちがブチュブチュやっている。
その後、ふたりに自転車屋探しを手伝ってもらった。
ネットで検索しても見つからないので、人に聞きながらあちこち歩き回って、ようやく発見。
5日後(時間かかりすぎだろ) 、ホイール完成。
ハブとスプロケットはそのまま、リムとスポークだけ交換して組んでもらった。
35マナト(3676円)。
メーカーはよくわからない。
最近は、リムが内側に盛り上がったタイプが流行っているのだろうか。
これだとバルブが長いタイプのチューブが必要になる。
聞こえてくるのは、アメリカンミュージック。
いったい、今まで見てきたイスラム国はなんだったのか。
なんでこんな渋滞してんだ?
トビリシほどではないが、やはり歩行者は虐げられている。
バクーは生活感がない。
スーパーも少ないし、市場も見かけない。
飲食店も全然。
アゼルバイジャン人はいつも何食ってんだろう?って思うほど。
ホステルで調理ができないので外食せざるをえないのだが、基本的にマックかケバブ屋の二択。
マックは、午前中はチーズバーガーとチキンバーガーが半額の0.80マナト(84円)なので、昼はいつもマック。
夜はケバるしかない。
どうやらマックでは、後ろに列をつくって並ぶのではなく、横に並ぶようだ。
前に出てカウンターに手を置き、ジリジリと横に詰めていく。
と思ったら後ろから来たヤツに抜かれた。
割り込んだヤツには悪いことをしたような表情はまったく見られないので、やっぱり強引な者が正義、というしきたりのようだ。
混んでる時はグチャグチャでわけがわからない。
カスピ海へ来たからには、キャビアを食べてみたい。
ここが観光国だったら、そこらにキャビアを売る店があったり、客引きに声をかけられたりするのだろうけど、あいにくアゼルバイジャンはまったく観光に力を入れていない。
いったいどこへ行けばキャビアが売っているのだろう?
今まで、裕福な国も貧しい国も見てきたが、こんなに商売っ気のない国は初めてだ。
僕がいろいろ文句やグチを言ったところで、ここの人たちは外国人旅行者の評判なんぞ知ったこっちゃないのだろう。
とりあえずスーパーに行ってみたら、海鮮売り場の片隅にそれらしきものがあった。
値段を聞いたら、1.70マナト(178円)だと言う。
1.70!?
僕は数千円は出す覚悟だったのだが。
ちなみに同じ場所にイクラも売っていたのだが、「IKRA」と書かれていた。
さっそく食べてみた。
味は、よくわからない。
かすかな塩味。
一般にキャビアはしょっぱいらしいが、アゼルバイジャン産はしょっぱくないと言われている。
しかし味も食感も、まるでインパクトがない。
なんだろ、これ?
さすがに安すぎるものを買ってしまったか。
カスピアンホステルに、流暢な英語を話すイラン人が来た。
彼は、今まで僕が見てきたイラン人とは似ても似つかない、インテリジェントなジェントルマンだ。
カナダの大学を卒業し、現在は、よくわからないがいくつかの企業を経営していて世界中を駆け回っているらしい。
その礼儀正しさ、紳士の振る舞い、豊富な知識に驚かされた。
トビリシのホステルにもイラン人がたくさんいたが、かれらはトラブルメーカー以外の何者でもなかった(それはそれで見ていて面白かった)。
彼の対イスラエルの考えを聞かせてもらったが、要は対立させているのは政府であって、イランにもユダヤ人はたくさんいるが自分たちはかれらを慕っている、と聞いて安心した。
アジア情勢にも詳しく、 日本の中韓との対立、領土問題などもよく知っているようだった。
日本人としては、戦後すみやかに解決すべきだった問題でいまだに国際社会を騒がせてしまっていることをとても恥ずかしく思う。
それから、ついに日本人も来た。
彼によると、どうやら僕が食べたキャビアは間違いなくニセモノ、それも他の魚の卵を加工したニセモノではなく、完全人工のゼリーみたいなものの可能性が高いみたい。
今日、出発する。
フェリーがあれば。
Bakı, Azerbaijan
2012年12月7日金曜日
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