デルフォイ神殿(世界遺産)。
古代ギリシャでは、ここは世界の中心とされ、神託所もある聖域であった。
この神殿に、「汝自身を知れ」という言葉が刻まれていたという。
この言葉はソクラテスによるものだと思っていたが、もともとここに書かれていたこの言葉をソクラテスが独創的な解釈をして有名になったようだ。
しかしここは、閉館時間が早すぎる。
閉館は3時で僕は3時前に到着したのだが、ラストエントリーは2時15分と書かれており、入れなかった。
街は、どこも人気が少なく、しんと静まり返って、ゴーストタウンのよう。
人と会っても、あいさつされたり話しかけられたり興味を持たれたりすることは、ない。
アフリカと中東では過剰に反応され続けたので、なんとも両極端。
犬だけは、過剰に反応する。
犬がとても多く、いちいち吠えられる。
たいてい首輪でつながれているが、たまに放し飼いのものもいて、追いかけられることもある。
全体的に、閉まっている店が多い。
今は冬季でシーズンオフというのもあるのかもしれないが、噂に聞いていた、ギリシャ人はあまり勤労でないという話は、見てて納得できる。
仕事はちゃんとしているが、労働時間がとても短そう。
経済は停滞している感じで、活気がない。
幹線道路沿いには、レストランがけっこう点在しているが、やはり閉まっているところが多い。
ある日、野宿後で食料が足りず、腹ペコでレストランに駆け込んだら、扉は開いていたのに営業していないようで、ガッカリ。
でも、おっさんが優しく出迎えてくれて、トーストとスナック菓子を出してくれた。
なんだか、イメージしていた豊かなヨーロッパとはだいぶギャップがあるが、親切にしてもらったので感謝。
あと、意外に英語が通じない。
田舎では、一部の人は話せるが、多くの人は初歩的な英語もダメなようだ。
アフリカで英語が通じるのにヨーロッパで英語が通じないというのも、イメージとは逆だ。
外国人旅行者は、観光地以外ではほとんどいない。
東洋人はまったく見ない。
当然のことながら、物価の高いエリアに入ってからは、節約モードに切り替えている。
朝昼はパンまたはクッキー、夜はスープスパゲティ。
食料は、大型スーパーで特売品を選んで買えば、けっこう安くすむ。
田舎の小さな売店だと驚くほど高かったりするので、大型スーパーでまとめ買いするのがベスト。
ただ、キリスト教圏では日曜日はほとんどの店が休み、というのはどこでも共通だが、ギリシャでは大型スーパーさえも日曜日は休みなので困る。
ちなみに、イスラム教圏は金曜定休、ユダヤ教圏は土曜定休。
宿泊施設は少ない。
今まで旅した物価の高いエリア、北米やオーストラリアやアフリカ南部では、ほとんどの街にキャンプ場があったものだが(キャンプ場も決して安くはなかったが)、こちらでは、今のところキャンプ場は一部の街にしかない。
しかも、ガイドブックによると営業期間は4~10月らしいので、今は閉まっているかもしれない。
やや大きめの街にはホテルが数軒あるが、こぎれいで高そう。
いい感じでさびれて安そうなホテルも見かけるが、そういうところは決まってつぶれている。
そんなわけで、必然的に野宿となる。
地中海性気候は、冬に雨がたくさん降る。
そろそろ春なので大丈夫だろうと思っていたのだが、甘かった。
アテネを出てから、ほぼ毎日雨。
なんとか屋根のある場所を探して、テントを張る。
廃墟野宿。
ギリシャは廃墟が豊富にある。
悪天候時の廃墟は実にありがたい。
屋根と壁があるだけで、パラダイスのようだ。
一応、立ち入り禁止風になっているが、すでにガラスが割られている箇所があったりするので、そこから忍び込む。
最悪、通報されて捕まるかな。
とうとう雪。
ちょっと笑えないくらい激しく降ってきた。
こういう時は、登りより下りの方がしんどい。
登りは体が温まるが、下りはひたすら冷える一方。
ゴアテックスのレインウェアは相変わらず優れた防水性と保温性で体を保護してくれるが、手袋と靴が濡れて冷たい。
スリップしないように、常時ブレーキを握っていなければならない。
ドロップハンドル用のブレーキレバーはやはり握りにくく、長時間握っていると手が痛くなる。
さらに、雪が目に入ってまともに目を開けていられない。
結局、この日の下りは、自転車から降りて、歩いた。
下りきったところで、街でもないのに突然ホテルが現れた。
しかも、1泊20ユーロと安い。
どうなることかと思ったが、助かった。
これから暖かくなるはずなのに、日に日に寒くなっている気がする。
今日も雨で、正午の気温が8℃。
手足の防水対策をしなければ。
Trikala, Greeceにて
Dst. 12984km