ルートの都合上、フィンランドに再入国。
天気というのはわからないもので、その後ふいに風は弱まり、気温は上がり、雪から雨へと変わった。
雨は嫌なものだが、風さえ弱まればある程度のペースで進めるし、暖かくなったので路面も凍結しない。
しかし、3日連続の雨。
気が滅入る。
南下は次から次へと障害が現れるな。
テントもだんだん劣化してきたのか、それほど激しくない雨でもどこからともなく浸水し、寝袋が濡れる。
次の旅では、ゴアテックスの寝袋カバーを買いたい。
バッグや衣類は防水でそろえてあるが、雨が続くと次第にいろいろなものが濡れてくる。
特に、靴と手袋の「防水」という言葉は、僕はもう一切信用しない。
ちゃんとした店でそれなりの値段がするものを買っても、1日雨天走行しただけで簡単に浸水を許してしまう。
そして寒冷地では、一度濡れてしまったものは、暖房の効いた室内で干さない限り、いつまでも乾いてくれない。
ああ、ようやく太陽と青空。
日中4℃もある。
ちょっと暑い。
春だ、春が来た!
夜もおそらく0℃以上あり、よく眠れる。
雨さえ降らなければ。
しかし依然として太陽は低く、日照時間は以前より短くなった。
活動できるのは8~17時ぐらい。
キツネらしき動物を見たが、すぐに逃げてしまった。
めずらしく、人から話しかけられた。
北欧人とは思えないほど気さくで陽気なノリのおじさんだった。
ようやく北極圏から脱出。
長かった。
でもこれより南になるとオーロラ・オーバル(オーロラ多発地帯)外になってしまうので、オーロラが見れる確率は低くなる。
アップダウンも減り、フラットになってきた。
川の対岸はスウェーデン。
また気さくなおじさん出現。
ようやくボスニア湾まで来た。
いやー、長かった。
しかしまだまだ南下を続ける。
物価高、冬の到来、予期できぬ気候と路面状況。
シビアな状況には変わりないが、気分的にだいぶホッとしている。
Tornio, Finland
21062km
2014年10月25日土曜日
冷たい南風
再び針葉樹林。
豊かな緑、乾いた道路。
暖かくなったように見えるが、実は気温はぐっと下がってきている。
ここからまた少し登る。
登ると言ってもたかだか標高300~400mだが、わずかな上昇でも劇的に冷え込むから恐ろしい。
向かい風。
顔が痛い。
北上中は風に助けられたが、これからはその風が障害となる。
この日はずっと快晴だったが、それでも日中-6~-8℃。
すでに最大レベルの厚着をしていて、これ以上着るものはない。
走行中はともかく、夜が不安だ。
ノールカップ周辺の寒さはまだかわいいもんだった。
水が凍ってしまわないよう、30分に1回ぐらいシェイクしてやるのだが、やがてそれもむなしく。
当然といえば当然のことだが、ペットボトルはバッグの中に入れておくべきだ。
どのバッグも一杯なので無理だと思っていたが、そうも言ってられなくなった。
一番凍らせてはいけないものを外にさらしておくのはあまりに愚かだ。
これでは野宿するにしても、調理も何もできない。
しばらく無人地帯が続いたが、村が現れたので駆け込み、小さなスーパーに行ってみた。
こんなにも厳しい環境で、人気のない村のスーパー、開いてるのかどうかも怪しかったが、幸い営業していた。
店長らしきおじさんに事情を説明して、お湯をいただけないかとお願いしたら、快く承諾してくれた。
「少し暖まっていきなさい」と、店の奥で休ませてくれた。
やさしいな。
この様子を見ていたお客さんのおばさんが、「ウチに泊まっていきなさいよ」と声をかけてくれた。
ああ、なんてありがたい。
ここはサーミ人の村のようだ。
サーミ人は北極圏先住民で、ノルウェー、フィンランド、スウェーデン、ロシアにまたがって分布している。
人種としてはコーカソイドだが、独自の文化と言語を持つ。
ここではほとんどのサーミ人が、サーミ語、ノルウェー語、英語の3言語を話せるという。
おばさんは、サーミの文化や歴史について長々と語ってくれた。
非常に強い民族意識が感じられた。
過去には、ノルウェー政府との衝突や大きなデモもあったらしい。
サーミ人は、今なおノルウェー人に対して心中穏やかでないようだ。
世界各地で見られる「先住者 vs 征服者」の確執、こんな北の果てにまである。
(注) おばさんがかぶっている帽子は中国旅行のおみやげだそうで、サーミの伝統工芸ではありません。
そして、宿泊施設等でもそうだが、民家もやはりセントラルヒーティングで、屋内は常時均等に暖かい。
どこの部屋にいても、起きている時も眠っている時も、寒さを感じることはまったくない、快適空間。
日本はなぜこのすぐれた暖房システムを導入しないのだろうか。
向かい風はさらに強くなっていく。
そしてアップダウン。
下りでも必死でこがないと進まないので、一日中登り続けているような感覚。
サーミ人はトナカイを食べる。
以前見た野生のトナカイは、ここまで立派な角ではなかった。
向かい風はさらに猛威をふるい、容赦なく真正面から吹きつけてくる。
1時間に7~8kmペース。
鼻歌まじりで調子良く北上していたあの頃がなつかしい。
いやたしかに北上中は追い風にお世話になったが、ここまで強烈なのはもらわなかった。
北上はすんなり行ったが、南下はなかなか進ませてくれない。
気象図を調べてみたら、どうも北欧は全域、南風が優勢のようだ。
これはもう観念するしかない。
せめて標高が下がれば、気温が上がり、背の高い樹木が風を防いでくれるのだが。
ノルウェークローネ。
穴の開いたコインは、日本円以外では初めて見るかな。
Enontekio, Finland
20704km
豊かな緑、乾いた道路。
暖かくなったように見えるが、実は気温はぐっと下がってきている。
ここからまた少し登る。
登ると言ってもたかだか標高300~400mだが、わずかな上昇でも劇的に冷え込むから恐ろしい。
向かい風。
顔が痛い。
北上中は風に助けられたが、これからはその風が障害となる。
この日はずっと快晴だったが、それでも日中-6~-8℃。
すでに最大レベルの厚着をしていて、これ以上着るものはない。
走行中はともかく、夜が不安だ。
ノールカップ周辺の寒さはまだかわいいもんだった。
水が凍ってしまわないよう、30分に1回ぐらいシェイクしてやるのだが、やがてそれもむなしく。
当然といえば当然のことだが、ペットボトルはバッグの中に入れておくべきだ。
どのバッグも一杯なので無理だと思っていたが、そうも言ってられなくなった。
一番凍らせてはいけないものを外にさらしておくのはあまりに愚かだ。
これでは野宿するにしても、調理も何もできない。
しばらく無人地帯が続いたが、村が現れたので駆け込み、小さなスーパーに行ってみた。
こんなにも厳しい環境で、人気のない村のスーパー、開いてるのかどうかも怪しかったが、幸い営業していた。
店長らしきおじさんに事情を説明して、お湯をいただけないかとお願いしたら、快く承諾してくれた。
「少し暖まっていきなさい」と、店の奥で休ませてくれた。
やさしいな。
この様子を見ていたお客さんのおばさんが、「ウチに泊まっていきなさいよ」と声をかけてくれた。
ああ、なんてありがたい。
ここはサーミ人の村のようだ。
サーミ人は北極圏先住民で、ノルウェー、フィンランド、スウェーデン、ロシアにまたがって分布している。
人種としてはコーカソイドだが、独自の文化と言語を持つ。
ここではほとんどのサーミ人が、サーミ語、ノルウェー語、英語の3言語を話せるという。
おばさんは、サーミの文化や歴史について長々と語ってくれた。
非常に強い民族意識が感じられた。
過去には、ノルウェー政府との衝突や大きなデモもあったらしい。
サーミ人は、今なおノルウェー人に対して心中穏やかでないようだ。
世界各地で見られる「先住者 vs 征服者」の確執、こんな北の果てにまである。
(注) おばさんがかぶっている帽子は中国旅行のおみやげだそうで、サーミの伝統工芸ではありません。
そして、宿泊施設等でもそうだが、民家もやはりセントラルヒーティングで、屋内は常時均等に暖かい。
どこの部屋にいても、起きている時も眠っている時も、寒さを感じることはまったくない、快適空間。
日本はなぜこのすぐれた暖房システムを導入しないのだろうか。
向かい風はさらに強くなっていく。
そしてアップダウン。
下りでも必死でこがないと進まないので、一日中登り続けているような感覚。
サーミ人はトナカイを食べる。
以前見た野生のトナカイは、ここまで立派な角ではなかった。
向かい風はさらに猛威をふるい、容赦なく真正面から吹きつけてくる。
1時間に7~8kmペース。
鼻歌まじりで調子良く北上していたあの頃がなつかしい。
いやたしかに北上中は追い風にお世話になったが、ここまで強烈なのはもらわなかった。
北上はすんなり行ったが、南下はなかなか進ませてくれない。
気象図を調べてみたら、どうも北欧は全域、南風が優勢のようだ。
これはもう観念するしかない。
せめて標高が下がれば、気温が上がり、背の高い樹木が風を防いでくれるのだが。
ノルウェークローネ。
穴の開いたコインは、日本円以外では初めて見るかな。
Enontekio, Finland
20704km
2014年10月21日火曜日
初めてのオーロラ!!!
18時半頃、宿の夫婦が「オーロラ出てきたよ!」と教えてくれた。
夜空を見上げると、うっすらと緑色の帯が。
「今からもっとはっきり見えるようになるよ。」
急いで着込んで、カメラの準備。
ご夫婦の言ったとおり、まもなくオーロラは活発化し、はっきりと明るく光って踊り始め、変幻自在に地平線から地平線へと駆け抜けた。
「うおおおおお!!!」
と大声を上げてしまうほど、大大大感動!!!
これがオーロラか。
僕のカメラは一眼レフではない、コンパクトカメラ。
一応シャッタースピード等を調整できるが、最長でも8秒、ISOも低め。
ネットで調べた付け焼き刃の知識でトライしてみたら、一応写った!
ぼやけてしまって見苦しいことと思います。
今後また撮り方を研究してみます。
カメラを操作している間にもオーロラは形を変え、光り方を変え、虹色に光った時もあった。
いったんカメラを置いて、霜が降りて凍った地面も気にせず寝転んで、しばし無心に見つめた。
30分ほどのショーであった。
その後消えてしまったと思ったら、深夜になって再発。
大大大興奮!!!
寒さなんか吹っ飛ぶ!!!
うまく撮るには練習とセンスが必要のようだ。
シャッタースピードは短くしてISOを上げた方がいい気がする。
ネットでオーロラ予報を見ることができて、それによると明日はさらにアクティブになるようだ。
Alta, Norway
夜空を見上げると、うっすらと緑色の帯が。
「今からもっとはっきり見えるようになるよ。」
急いで着込んで、カメラの準備。
ご夫婦の言ったとおり、まもなくオーロラは活発化し、はっきりと明るく光って踊り始め、変幻自在に地平線から地平線へと駆け抜けた。
「うおおおおお!!!」
と大声を上げてしまうほど、大大大感動!!!
これがオーロラか。
僕のカメラは一眼レフではない、コンパクトカメラ。
一応シャッタースピード等を調整できるが、最長でも8秒、ISOも低め。
ネットで調べた付け焼き刃の知識でトライしてみたら、一応写った!
ぼやけてしまって見苦しいことと思います。
今後また撮り方を研究してみます。
カメラを操作している間にもオーロラは形を変え、光り方を変え、虹色に光った時もあった。
いったんカメラを置いて、霜が降りて凍った地面も気にせず寝転んで、しばし無心に見つめた。
30分ほどのショーであった。
その後消えてしまったと思ったら、深夜になって再発。
大大大興奮!!!
寒さなんか吹っ飛ぶ!!!
うまく撮るには練習とセンスが必要のようだ。
シャッタースピードは短くしてISOを上げた方がいい気がする。
ネットでオーロラ予報を見ることができて、それによると明日はさらにアクティブになるようだ。
Alta, Norway
2014年10月20日月曜日
南下
ホニングスヴォーグからさらに100kmほど、来た時と同じ道を戻る。
またあの海底トンネルをくぐって本土に戻る。
何気に、あのトンネルもひとつの山場だ。
長さ7km弱、高低差200m強のトンネルは異様に長く感じる。
通りすがりのドライバーから蛍光ジャケットをいただいた。
北欧の人は、欧米人の中では相当シャイな部類だと思う。
気さくに話しかけられることは少ない。
でもひとたび接してみると、皆やわらかい物腰で、親切にしてくれる。
雨。
雨は嫌なものだ。
雪の方がずっといい。
雪上テント。
特に問題ない。
寝る時は、余った衣類等を背中と尻の下に敷けば冷たさは伝わってこない。
ただ、夜に雨や雪、あるいは霜が降りると、翌朝テント自体が凍ってしまい、ポールが抜けにくい。
無理に力を入れるとテントが破損したりポールが折れたりするおそれもあり。
寝てたところの雪が溶けてる。
最も恐ろしい路面状況。
雨が雪を程良く溶かし、一晩たってスケートリンク並みの仕上がりに。
ためしにこいでみたら、すぐコケた。
さすがにこれはスタッドタイヤでも太刀打ちできない。
しばらくすると、除雪車が砂を散布してくれる。
これが効果あり、やってくれると全然違う。
海から離れて少し内陸へ。
やはりある程度積もっている方が滑りにくい。
朝、自転車のワイヤーロックの鍵穴が凍ってしまった。
指の力でこじ開けようとしてもピクリとも動かず、最初は壊れてしまったのかと思ってあせったが、火であぶったら開いた。
-7℃。
前の晩に雨が降らずに霜が降りると、それほどツルツルにはならず、意外に調子良く進める。
霧が濃いと、氷滴がまつ毛に付着して上下のまつ毛が互いに張り付いてしまうので、目をパチパチさせながら進む。
雪が降ってるわけではないのに、こんな。
-8℃。
気温が下がってきてるのは、登っているからだ。
暑い地方では、300~400m程度上昇したって少しも涼しくなった気にならないのに。
こんなところで日本製、ちょっとうれしい。
-9℃。
ペットボトルの水は完全に凍ってしまって、飲めない。
寒冷地走行の最大の難関は、水が飲めないことと、調理ができないことだ。
経験上、-10℃以下ぐらいになるとガスが気化せず、火が使えなくなる。
これからどうしようかな。
低温になるとiPhoneも起動しなくなるので、 服のポケットに入れて体温で暖めておく。
他の電子機器も、バッテリーの消耗が非常に早くなる。
湖、凍結。
再び海。
海ってそう簡単に凍らないと思ってたけど、けっこう凍り始めてる。
この日は比較的路面状況は良かったが、それでもこの調子だと1日60~80kmが精一杯。
南の方はまだ雪は降っていないのか、アップダウンはきつくないのか、わからないが、まだしばらくはペースダウンが続きそうだ。
テント内結露で濡れてしまった寝袋、その他たまった洗濯物を干すと、部屋はこんなになる。
冬の中央アジアの時もそうだったが、日中の気温が氷点下なので、外に干すとすぐに凍ってしまって、永遠に乾かない。
洗濯物は暖房のきいた室内でのみ乾く。
Alta, Norway
20471km
またあの海底トンネルをくぐって本土に戻る。
何気に、あのトンネルもひとつの山場だ。
長さ7km弱、高低差200m強のトンネルは異様に長く感じる。
通りすがりのドライバーから蛍光ジャケットをいただいた。
北欧の人は、欧米人の中では相当シャイな部類だと思う。
気さくに話しかけられることは少ない。
でもひとたび接してみると、皆やわらかい物腰で、親切にしてくれる。
雨。
雨は嫌なものだ。
雪の方がずっといい。
雪上テント。
特に問題ない。
寝る時は、余った衣類等を背中と尻の下に敷けば冷たさは伝わってこない。
ただ、夜に雨や雪、あるいは霜が降りると、翌朝テント自体が凍ってしまい、ポールが抜けにくい。
無理に力を入れるとテントが破損したりポールが折れたりするおそれもあり。
寝てたところの雪が溶けてる。
最も恐ろしい路面状況。
雨が雪を程良く溶かし、一晩たってスケートリンク並みの仕上がりに。
ためしにこいでみたら、すぐコケた。
さすがにこれはスタッドタイヤでも太刀打ちできない。
しばらくすると、除雪車が砂を散布してくれる。
これが効果あり、やってくれると全然違う。
海から離れて少し内陸へ。
やはりある程度積もっている方が滑りにくい。
朝、自転車のワイヤーロックの鍵穴が凍ってしまった。
指の力でこじ開けようとしてもピクリとも動かず、最初は壊れてしまったのかと思ってあせったが、火であぶったら開いた。
-7℃。
前の晩に雨が降らずに霜が降りると、それほどツルツルにはならず、意外に調子良く進める。
霧が濃いと、氷滴がまつ毛に付着して上下のまつ毛が互いに張り付いてしまうので、目をパチパチさせながら進む。
雪が降ってるわけではないのに、こんな。
-8℃。
気温が下がってきてるのは、登っているからだ。
暑い地方では、300~400m程度上昇したって少しも涼しくなった気にならないのに。
こんなところで日本製、ちょっとうれしい。
-9℃。
ペットボトルの水は完全に凍ってしまって、飲めない。
寒冷地走行の最大の難関は、水が飲めないことと、調理ができないことだ。
経験上、-10℃以下ぐらいになるとガスが気化せず、火が使えなくなる。
これからどうしようかな。
低温になるとiPhoneも起動しなくなるので、 服のポケットに入れて体温で暖めておく。
他の電子機器も、バッテリーの消耗が非常に早くなる。
湖、凍結。
再び海。
海ってそう簡単に凍らないと思ってたけど、けっこう凍り始めてる。
この日は比較的路面状況は良かったが、それでもこの調子だと1日60~80kmが精一杯。
南の方はまだ雪は降っていないのか、アップダウンはきつくないのか、わからないが、まだしばらくはペースダウンが続きそうだ。
テント内結露で濡れてしまった寝袋、その他たまった洗濯物を干すと、部屋はこんなになる。
冬の中央アジアの時もそうだったが、日中の気温が氷点下なので、外に干すとすぐに凍ってしまって、永遠に乾かない。
洗濯物は暖房のきいた室内でのみ乾く。
Alta, Norway
20471km
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