フライトスケジュールは調べていないが、運が良ければ今日カトマンズへ帰れるかもしれない。
しかし空港で聞いてみたら、今日は風があるので欠航だそうだ。
ルクラの空港は山の中で、滑走路も異様に短い。
飛行機は15人乗りの小型機で、ちょっとでも天候が不安定だと、飛ばない。
仕方なく、ルクラの宿でムダに1泊。
翌朝。
晴天。
少し風が吹いているが、そよ風程度。
空港が開くのは6時半で、開くのと同時に入場。
しかし、チェックインカウンターには誰もおらず、状況がよくわからないまま、待つ。
空港内も暖房などなく、外とほぼ同じ寒さ。
他にも旅行者がたくさんいるが、皆寒くてじっとしていられず、空港内を歩き回ったりしている。
荷物用のはかりがあって、それに乗ってみた。
最大限に厚着して、重たいトレッキングシューズを履いた状態で、67kgしかなかった。
やっぱ痩せすぎだ。
数時間待って、ようやくチェックインカウンターに係員が現れ、チェックインしてチケットがもらえた。
よし、なんとか乗れそうだ。
しかし、そこからがまた長かった。
建物内はあまりに寒いので、外の日向に移動して待機するよう、誘導された。
時々ヘリがやってきて、客を乗せて飛び去っていく。
ヘリなら、多少風が吹いても飛べるみたいだ。
昼頃、客たちが空港を出てゾロゾロと村の方へ歩いて行った。
もしやと思い、係員に聞いてみたら、本日も欠航だそうだ。
ひどいもんだ。
朝から寒い中、客を6時間も待たせておいて、何の状況説明もなく、何のケアもなく、空港使用税なるもの(200ルピー)も払わせておいて、こちらから確認して初めて欠航と発覚。
またムダに1泊。
最大の不安は、所持金が残り少ないということだ。
ルクラにはATMがない。
この程度の風で飛ばなかったら、いつまで待っても飛べないぞ。
明日も明後日も?
無一文になったらどうすんの?
ああ、昨日はちょっといいカフェに入って、カフェラテ2杯とエベレストバーガーを平らげてしまった。
バカなことをしたな。
もう贅沢は禁止。
唯一の救いは、宿泊費が安いということだ。
ここがもし1泊1000円とか2000円とかする国だったら、即終了だ。
(ただし宿泊費以外の物価は高い)
翌朝。
晴天。
風強し。
こりゃまたダメだな、と思いながらも一応6時半に空港入り。
ふたりの日本人と出会った。
どちらも単独長期旅行者で、ユウスケ君とユウキ君。
昨日はほとんど誰ともしゃべらず、ひとりで震えながら耐え忍んでいたが、今日は日本語で話をしながら、この苦痛をまぎらすことができる。
帰りたい。
早く帰りたい。
暖かいところに。
カトマンズに着いたら、まずATMに行って現金をドッサリおろして、それから和食屋に直行して、贅を尽くして食いまくろう。
スプライト飲みたいよね。
シャワー浴びたいね。
洗濯したい。
ネットやりたい。
3人でそんな話ばかりして、夢想にふけった。
本当に、下界が恋しい。
文明と物質にまみれたいよ。
リチャードというオーストラリア人が、僕らに「ヘリに乗らないか?」と話を持ちかけてきた。
彼はもう4日も飛行機を待ち続けている。
今日も、この風だと飛ばないのは明白。
ヘリなら飛べるが、6人乗りなのでなんとかピッタリ人数を集めたいという。
ヘリの相場は、ひとりUS$250~300と聞いた。
しかしリチャードは交渉上手なのか、航空会社の人にUS$180まで値切らせた。
もともと飛行機がUS$160で、キャンセルすれば全額ではないが返金される。
となると、いつ飛ぶかわからない飛行機を待ち続けるより、ちょっと料金上乗せしてヘリに乗って確実に帰る方が、ずっと魅力的だ。
ていうか、航空会社の方でこういう案内をしろよ、と思う。
皆、帰りたくてしょうがないのに何日もムダに滞在して、航空会社はそれを知っていながら客を完全放置。
飛行機欠航→キャンセル→返金→ヘリの案内、とスムーズにスピーディに手続きできれば、初日に帰れたかもしれない。
あるいは、こんな頼りない飛行機は廃止して、すべてヘリにすべきでは?
もちろん料金はもっと安くできるはず。
グチはさておき、現実的な問題。
僕の全所持金が3000ルピー(3185円)を切っており、ヘリ代を払うことができない。
飛行機代の返金はここではできず、カトマンズでチケットを買ったところでしかできないらしいが、仮にここでできたとしてもヘリ代に及ばない。
ユウキ君は、ギリギリ払えるらしい。
ユウスケ君は、隠し財産をかき集めれば、僕の分を立て替えることができるという。
マジですか!?
僕はユウスケ君に頭を下げて、甘えさせてもらうことになった。
はあ、恥ずかしい。
38歳にもなってこんな旅してちゃ、ダメだよね。
ユウキ君は大学を卒業したばかりで、いかにも若々しい。
ユウスケ君の年齢はまだ聞いていないが、僕より少なくとも10歳は若そうだ。
・・・38歳。
世の38歳たちは、どんな旅をするのだろう。
若いふたりに無償でヘリ代をプレゼントするぐらいの太っ腹でも不思議ではない年齢だ。
どこからともなくカップルが現れて、ちょうど6人そろって、我々はヘリでカトマンズに帰ることが確定した。
しかし、午後から天気が急変し、雲が出てきた。
時間がたつにつれて雲は分厚くなり、素人目に見てもこれは無理だろうとわかった。
16時半、結局この日はヘリも飛ばず。
10時間待ちはこたえた。
またムダに1泊。
ユウスケ君、ユウキ君、リチャード、僕、の4人で同じ宿に泊まることにした。
もともと600ルピー(637円)の部屋だが、またリチャードの強引な交渉術で200ルピー(212円)に。
2人で1部屋をシェアしたので1人100ルピー(106円)ですんだ。
リチャードたくましいな。
実際、相場は200ルピーなので、600は高すぎるなと思った。
翌朝。
晴天。
微風。
今日こそは、と期待してまた6時半に空港へ。
リチャードは「わかるもんか」と慎重だ。
彼は今日で5日目、しかもホラ吹きネパール人たちに翻弄され続けて、疑心暗鬼になってしまうのも無理はない。
でも今日はきっと飛ぶよ。
しばらく待たされてじらされた後、ついに我々のヘリが現れた!
人生初のヘリということもあり、一同興奮して乗り込む。
飛んだ!
本当に飛んだ!
帰れるんだ!
1時間弱で、無事カトマンズに帰還。
計画通り、脇目もふらずATM→和食屋!
http://jp.bloguru.com/yusuke
晩飯も一緒に、モモ屋さんで。
この喜び。
この幸福感。
かれらに出会えてよかった。
ひとりだったら、今頃まだ空港で震えながら待ち続けていただろう。
感謝!
Kathmandu, Nepal