2013年9月29日日曜日

カルドゥン・ラ

まずはカルドゥン・ラへ向かう。
「ラ」はラダック語で「峠」という意味。





レーは美しい街だ。


写真左端の丘の中腹に王宮跡がある。
写真右端の丘の上の白い建造物が、日本製寺院シャンティ・ストゥーパ。


だいぶ前に紹介した、これ。


滞在していた宿は、この丘のふもとに近い。










日中は22℃ぐらい。
天気も良く、自転車も万全で、最高の気分。
えんえん登りなのでほとんど自転車はこげずに押して歩いているのだが、それでも本当に気持ちいい。

標高4000m。


写真だと確認できないが、ずっとシャンティ・ストゥーパが見えている。
あえてズームでは撮らない。









まだまだ、レーの街とシャンティ・ストゥーパがよく見える。
あえてズームでは撮らない。



標高4600m、チェックポストが現れ、ここでILPを提示する。
時間帯で通行規制しており、登り方向は15時にならないとここを通過できないということで、車の行列ができていた。
「自転車もダメなの?」とお願いしてみたが、ダメのようだ。
レーからカルドゥン・ラまでわずか40kmだが、えんえん登りだと丸一日かかるので、日没前に到着するためにも、こんなところで1時間以上もムダにしたくなかった。



小さな店が1軒あり、そこでメシでも食うしかなかった。
インド名物、マギー。


食が乏しいインドでは、小さな村の店で出てくる定番、いや唯一のメニューといったら、このマギー。
要はインスタントラーメン。
カレー味。

外国人だけでなく、インド人旅行者も多い。
格差の激しいインドでは、けっこう裕福に旅行している人もめずらしくない。
待っている間、何人ものインド人旅行者が人なつっこっく僕に話しかけてくれるのだが、自転車で世界を旅しているということをなかなか理解してくれなくて、何度も繰り返し説明して、やっと通じると「写真を撮らせてれ」となる、いつものパターン。

未舗装開始。






マーモットみっけ。


氷河みっけ。


1日でカルドゥン・ラに到達するつもりだったのだが、標高が上がるにつれて息が苦しくなり、みるみるペースが落ちていく。
チェックポストで足止めをくらわなかったとしても、1日では無理だったか。
情けないことに、この日は32kmでストップ。
6年前、アンデスでリアルに高山病になった僕としては、ここでブレーキをかけるべし。
昔はこういう状況でもアクセルを踏み込んでいたから、よく痛い目にあった。

標高4800m、テント生活をしている出稼ぎ道路工事業者たちに混じってテントを張らせてもらった。


格差の激しいインド、出稼ぎのかれらはまっとうな労働環境が与えられているようには見えない。
英語もまったく通じない。

いつもどおり、テントを張っている間は全員大注目。


また僕のテントや自転車を触りまくり、いじりまくる。
インド人というのは他人の物を触らずにはいられないのか。

テントの中から氷河が臨めた。


レーの街もまだ見える。

スパゲティは、17~18分加熱すれば一応ゆであがる。


6年前のアンデスでは、どうやってもうまくできなかったのに。
キャンプ用コンロの性能が向上したのか、それともスパゲティが進化したのか!?
ただし、水分を吸いすぎてしまうのでアルデンテは無理っぽい。

アジアでは、ソーセージやハムなどの保存可能な肉類をなかなか見かけないので、具は野菜のみ。

100円ライターでは火はつかない。
マッチが最強。
マッチならどこの国でも売っているし、高地でも確実に火がつく。

満天の星空。
天の川がレーの街へと流れ落ちる。
明日もきっといい天気だろう。

テント内は8℃。
少し着込むだけで十分。

あまりよく眠れない。
睡眠中は意識的に深呼吸できないので、息苦しくなって何度も目を覚ます。

翌朝。


・・・えっ!


・・・ウソでしょ!?


まだ9月だよ!?

決断を迫られた。
これは一時的な雪なのか、それとも冬の到来なのか。
本格的に降って積もるのなら、今のうちに下山するのが懸命だ。
カルドゥン・ラまであとわずか9kmだが、この先はさらに高度が上がって空気も薄くなるし、天候も道路状況も、悪化することはあっても良くなることはなさそうだ。
この9kmは決してあなどれない。

悩んだ結果、決行。


気温は夜よりも下がり、0℃。





初めての5000m。

今までは、ペルーのアンデスで4600mが最高だった。





気圧は550hPa。
体力の消耗がハンパない。
1時間で2~3kmしか進めないが、それでもいい。
とにかく大事なのは、立ち止まって深呼吸。
これを怠ってはならない。

やはり、雪は激しくなってきた。


あともうちょいなのに、どんどん雪が深くなっていく。


なんでだろう?
こんなにしんどいのに、たまらなく気持ちいい。

「なぜ自転車で旅をするのか?」
今まで何百回もこの質問をされた。
なぜ「なぜ?」と聞くのか、僕にはよくわからないし、いまだにうまい答え方もみつからない。

楽しいからに決まってる。
こんな楽しいこと、この世にふたつとない。

この旅が終わったら、まっとうな定職につく考えもあったけど、どうもこの感じだと旅をやめられそうにない。
ごめんなさい。

カルドゥン・ラ(標高5359m)。


インドはここが標高5602mで世界一高い峠だと主張しているが、wikipediaによるとどうもそれは誤りのようだ。

僕の高度計では5250m。

やっぱ誤差が出るな。

キリマンジャロ(標高5892m)よりは低いがモンブラン(標高4807m)よりは高い。
気圧は530hPa。

峠からの眺めはまったくだが、それでも満足度は100!

峠には小さな店が何軒かあって、どこか適当なスペースにテントを張らせてもらえないか、と頼んだが断られた。
でもまあとりあえず中に入って休みなさい、とまたマギーをいただいた。









この峠の先のヌブラの谷に行く予定だったのだが、さすがにこの雪だとこれ以上進むのは無理。
正直、ヌブラよりもカルドゥン・ラ越えをメインとして考えていたので、ヌブラ断念はそれほど悔しくはない。
同じ道を下って再びレーへ。
ヌブラの先は通り抜けできず、ILP取得と食料補給の用もあるため、どの道レーに戻ってくる予定ではあった。

レーでは雪ではなく雨が降ったようだが、不安定な空模様。
街はまた一段と冬眠化が進んでおり、僕のお気に入りのレストランやネットカフェもバタバタと閉まっていた。


Leh, India

3461km



2013年9月26日木曜日

明日出発

天候ヨシ。
ここのところ、すっきりとした青空でずっと安定している。
この陽気なら、山の中に入ってもしばらくは大丈夫だろう。
道路閉鎖もまだ先のことだと思う。
ただ、すでに多くの宿や店が閉めてしまっている。
通年営業する店もあるようだが、この先食料の調達が難しくなってくるかもしれない。
ビザ期限も迫っていることだし、のんびりはできない。

体調もヨシ。
長距離ではないが、慣らしとして少しサイクリングした。
ホイールはもちろん、ブレーキ調整もディレーラー調整もバッチリで、異常なし。
いい気持ちだ。

以前も書いたように、ラダックには外国人が立ち入るにはILPという許可証が必要なエリアがいくつかある。
僕は明日、ヌブラというILPが必要なエリアへ向かう。
ILPは、レーの旅行会社で朝一番で申請すれば昼すぎには受け取れる。
ルール上はひとりでは取得できないことになっているので、架空の人物を仲間として書いてもらう。
ILPは簡単に偽造できそうな安っぽい紙切れで、場所や日付を修正液で消して書き直してコピーして再利用する旅行者も多いようだ。
費用は450ルピー(716円)。
このうち旅行会社の取り分がいくらなのかは知らないが、床屋が50ルピー(79円)というここの物価を考えると、手間賃としてはちょっとふんだくりすぎだ。
有効期限は1週間。

レーでも祭りをやっていた。




































今や僧侶もスマホで撮影する時代。














祭りを比較してみて改めて思ったのだが、ここがインドというのはやはり奇妙だ。
ひとつの国に複数の民族文化があるにしても、いわゆるインド人とラダック人はあまりに違いすぎる。
中国、インド、ブータンのチベット仏教圏をひっくるめてひとつの国として独立させることができればスッキリするんだけど(チベット共和国? チベティスタン?)、そうもいかないんだろうな。







宿の人にも長らくお世話になった。
僕は長期滞在すると、「こいついつまで居座るつもりだよ?」なんて思われたらどうしよう、と不安になってしまうのだが、この宿の人たちはいつも笑顔で「ジュレー!」と感じ良くあいさつしてくれた。
郵送物のことも気にかけてくれていた。

今日、宿の庭でとれたリンゴをいただいた。



Leh, India