ドイツもオーストリアも、親切な人が多い。
僕は詳細な地図を持っていないのでよく道に迷うのだが、自転車を止めて地図を広げて10秒もすると、人がやってきて道案内してくれる。
しかも、説明が上手でわかりやすい。
今日も雨。
しかしまあ、よく降ること。
ヨーロッパがこんなに雨が多いなんて、知らなかった。
日本の梅雨なんて、比じゃない。
ドナウルートでは4日連続で晴天だったこともあったが、それ以外は雨の降らない日はない。
昨日は、わずかな晴れ間をねらってザルツブルク観光。
モーツァルトが住んでいた家。
カラヤンがいた。
右顔は撮っちゃいけない約束だったはずだが。
ベルリン・フィルの常任でグラモフォンからレコードを出していたから、ドイツ人っぽいイメージだが、実はここザルツブルク生まれのオーストリア人。
モーツァルトが生まれた家。
生家にも住家にも、たくさんの楽譜が展示されていた。
直筆譜なのか、本物なのかコピーなのか、わからなかった。
異様にきれいだったから、コピーかもしれない。
以前は、モーツァルトは晩年は貧しくて不幸だった、と語られてきたが、近年の譜面研究によると、そうでもなかったらしい。
借金はどこの家庭にも当たり前のようにあったし、晩年の直筆譜には、余白にジョークや、得意の下ネタが書きこまれていたりして、けっこう元気だったようだ。
モーツァルトといえば、なんといってもグレン・グールドの弾くピアノソナタ(8~15番)が衝撃だった。
モーツァルトのピアノソナタは小学生でも弾けるような簡単なものばかりだが、グレン・グールドが弾くと超絶技巧練習曲のように聞こえる。
常軌を逸したテンポだが、旋律がちゃんと歌っていて(彼自身も歌っていて)、随所に「聴かせどころ」が散りばめられている。
その演奏はガッチリと僕をとらえ、今もiPodでよく聴く。
グレン・グールド以外のピアニストが弾くモーツァルトは、僕はほとんど無反応なので、モーツァルトはそれほど好きではなく、グレン・グールドが好きなだけなのかもしれない。
とはいえ、小学生の時、初めてのピアノの発表会で選んだ曲はモーツァルトだったし、同じく小学生の時、映画「アマデウス」に釘付けになったのも、よくおぼえている。
今、そのモーツァルトが生まれ育った地にいる。
いろいろイメージしてみる。
今から250年も前、5歳だか6歳だかの少年が、大人のバイオリニストが弾くバイオリンのピッチが8分の1音高い、とか指摘しながら、この界隈を歩いていた。
モーツァルトという個人は間違いなく大天才だが、その大天才を生み出したあの時代のこの土地には、特別な空気があったに違いない。
歴史には名を残さなかったプチ天才や名手がそこらじゅうにいて、腕を競い合ったり、新しい音楽を次々と生み出したりした、そんな刺激に満ちた空気が、大天才を出現させる土壌を培ったのだろう。
また「アマデウス」を観たくなった。
このジャズの人たちは、「サウンド・オブ・ミュージック」系。
このギタリストはクラシックだが、アンプにつないでリバーブかけまくりだった。
これは???
現在のザルツブルクは完全に観光地で、新たな大天才を輩出するような空気はない。
でも時々、楽器を抱えた日本人がいたり、演奏会のプログラムに日本人の名前があったりする。
今は、日本人の演奏家に勢いがある気がする。
ボン、アイゼナハ、ワルシャワも行ってみたかった。
当初の計画では絶対行くつもりだったのに、悔しい。
いつの日か、ヨーロッパ北部まとめて、リベンジしに行ってやる。
この丘を下っていた時、最後が階段になっていて、黒人と白人の夫婦がベビーカーを下ろすのに難儀していたので、手伝ってあげた。
黒人男性が、「ドコカラキマシタカ?」と日本語で聞いてきたので、ちょっとびっくりした。
男性はタンザニア人、奥さんはドイツ人だそうだ。
僕が片言のスワヒリ語をしゃべったら、今度は彼がびっくりしていた。
しばらく話しこんでしまった。
こんなところで、スワヒリ語と日本語と英語のミックスでしゃべるなんて、不思議な感じだった。
ドイツ語も話せたら、カッコイイだろうな。
おととい、歯医者に行った。
「この差し歯はもう使えない、新しくつくる必要がある、今はとりあえず応急処置でくっつけてやる、2週間ぐらいしたらまた取れるかもしれない。」って感じですまされてしまった。
なぜこの差し歯がもう使えないのか、わからない。
変形したようにも見えない。
料金は16ユーロ。
以前タンザニアでくっつけてもらった時も、たしか1500円ぐらいだったから、大差ない。
キャンプ場に戻って、晩飯を食べ始めたら、2分で取れた。
応急処置にも何もなっていない。
歯医者というのは本当に、当たりハズレが激しい。
今回は完全にハズレだった。
「コイツは旅行者だから、帰国してからちゃんと治せばいいだろう。」ぐらいに思われてしまったようだ。
多少お金と時間がかかってもいいから、取れない歯をつくってほしい。
Salzburg, Austriaにて
Dst. 16699km