2014年7月28日月曜日

広西チワン族自治区 1

国境は混雑していた。

越境者は全員徒歩。
車とバイクは制限されているのか、人々は手で大荷物を運んでいた。
ベトナム人からバイクを取り上げてしまったら、国境の街を行き来するぐらいで、そう遠くへは行けまい。

ちょっと面白いな。
中国がベトナム人の入国を制限したいと思ったら、入国審査基準を厳しくするとかじゃなくて、単にバイクを禁止すればいいだけの話、ということか。

よくわからないが、2万ドン(95円)払って通行証のようなチケットを買わされた。

見渡した感じ、外国人は僕ひとりだけ、自転車も僕ひとりだけ。
大注目を浴びながら、自転車とともに行列に加わる。
いったん自転車を建物の外に置いてからではなく、自転車ごと建物内に入って手続きするように指示されたのである。
待っている間、油断していると割り込まれるので、肘と自転車を使ってガードする。
後ろにいるヤツが自転車に積んである荷物をいじりだす可能性もあったので、ちょくちょく後ろを振り返って注意を払う。

ちょうど僕の番がまわってきたところで、停電したのかシステムがダウンしたのかわからないが、業務がストップしてしまった。
何十回も国境越えを経験しても、やはり緊張感がつきまとうもので、イライラするわけではないが、早く終わってほしいなと思う。
数分待たされて(この数分が長い)、無事出国。

橋を渡って、中国へ。


ふつうは出国より入国の方が時間がかかるものだが、何事もなくスムーズに手続き完了した。
入国カード記入もなし、質疑応答もなし、係員は感じ良かった。
ノービザで14日滞在可。
荷物は機械に通してチェックされるのでいったんすべて外して、その先は階段になっていたので担ぎ下ろした。

いつも感心するのだが、iPhoneとiPadの時計は、国境を越えただけで自動的に時差が調整される。
SIMを替えずとも、設定をいじらずとも、気づくとその国の時刻になっている。
これはGPS機能の一部なのか、それともその国の電話会社の電波をキャッチしているのか、恥ずかしながらいまだに仕組みがよくわからない。
ラップトップの時計は、ネットに接続しても自動的には変わらないので、コントロールパネルを開いて手動でタイムゾーンを変更しなければならない。
あと、僕の腕時計は電波時計なのだが、これは主に先進国でしか電波を発信していない。
南アフリカからここまでで、受信したのはヨーロッパだけだ。

入国してすぐ、ガラリと世界が変わった。




ウイグルで見た街並みと大きな違いはないが、カンボジア→ラオス→ベトナムを経てから中国入りすると、圧倒的な国力の差を感じさせる。
この国境の街はじっくり見ずに通過しただけだが、物が豊富そうな空気が伝わってきた。
道路にはゴミ箱があり、救いようもないほどゴミだらけだったベトナム北部なんかと比べると、とてもクリーンだ。
なんだか、ホッとする。

立派なスーパーだってある。


冷えたドリンクだって難なく買える。

ベトナム北部では、冷蔵庫に入っているのはすべてミニサイズで、大サイズはぬるいのしか置いてなかった。

日傘バイクがトレンドなのかな。


もちろんまだクラクション文化圏だが、ベトナムに比べると2~3割減。

ウイグルに比べると電動バイクの普及は遅れているようだ。
まだ半分ぐらいはガソリンエンジン。

道路は広くて走りやすい。


ガキに追跡されることもなさそうだ。
でもこうやって経済レベルが上がると、子供たちの「ハロー! ハロー!」もなくなる。
こういう法則はいつも通り。



何が楽しみって、これですよ。

20元(326円)。

ウマイ!
さすがだ。

アジアの南部と東部で、中国の食文化の影響を受けていない国はほぼないと思う。
東南アジアの食も、全体的に中華っぽさがあった。
しかし、本場はやはり違う。
すごく大ざっぱに適当につくってるように見えて、食べてみると味に深みがある。
ただ、ライスに関してはベトナムの方が粘り気があっておいしかった。

あ、なんか変な道に入っちゃった。


ローカルロードはこんなもんか。


まさか、ベトナム人に見栄を張るため、国境付近だけちゃんとしてみせた、ってわけじゃないだろうね。
そんな気がしてきちゃったよ。



街が見えてきた。


防城という中規模の街で1泊。

ある程度の規模の街では、宿は豊富にある。
拒否される覚悟で、安そうな宿から1軒1軒あたってみるが、やはりことごく拒否される。
外国人は宿泊拒否というルールを知らない従業員も多いようで、最初はうなずいていたのに、チェックインの手続きの途中でゴチャゴチャもめだして、上司に電話して、数十分も待たされた挙句、「没有」(No)と言われたりする。
結局、星のついた高級ホテルに泊まるハメに。
148元(2415円)。

これも覚悟していたことではあるが、やはり見事なまでに英語が通じない。
世の中には中国語を話せない人間も存在するんですよ、という事実を、かれらは受け入れることができないようだ。
いやいや、そんな大きな声で同じセリフを繰り返されても、耳が遠いわけじゃないんですよ。
東南アジアでもそうだったが、どこへ行っても何を言っても「アア!?」と言われるので、強いメンタルを維持しなければやっていけない。
特に中国は、アメリカの「英語至上主義」に劣らぬほど、「中国語至上主義」を強く持っている感じがする。

現地の言葉を話せない自分が悪い。
それはたしかにその通りかもしれない。
でも、星のついた高級ホテルで、看板に英語で「HOTEL」と掲げておいて、そして外国人も受け入れるホテルだったら、せめて中1レベルの英語ぐらいしゃべれてもいいんじゃない?
「Do you speak English?」と聞かれて「アア!?」はねーだろ。

彼女たち(レセプションで接客するのはたいてい若い女性)は、僕が現れると、
「なんか言葉が通じない客が来ちゃったんだけど・・・」
みたいな感じで、一時騒然となる。
外国人の来客など、有史以来初めてのことのようだ。

ウイグル自治区で見た漢族は、かれら自身がそれほど遠い昔ではないある時期に移住してきた異邦人であるので、僕のような外国人が現れてもさほど過剰な反応は示さなかったように思う。
むしろ、かれらは自分たちがウイグル人から憎まれていることを自覚しており、僕はどちらかというと漢族サイドの人間だとみなされていた感じもあった。
しかしここでは、僕はまるで宇宙人のような扱いだ。

僕は、あらかじめiPhoneに読み込ませておいた中国語フレーズを見せたり、旅行会話集のコピーを見せたり、筆談してみたり、小学生でもわかるような基本英単語を言ってみたりして、あの手この手で必死に意志の疎通を試みる。
それに対して、女性従業員はまともに答えようともせず、僕から目をそらして仲間の従業員に向かって、
「中国語通じないとかマジ受けるんですけど! ウチら英語なんかわかるわけねーし! キャハハハ!」 (←僕の想像翻訳)
とバカ騒ぎする。
その後しばらく僕を放置して内輪だけでしゃべり込み、時々僕に中国語で話しかけて、やはり通じないので、
「やっぱムリ~」 (←僕の想像翻訳)
みたいな感じでケラケラ笑う。

ホテルに限らず、レストランや売店なんかでも同様、タイあたりからずっと、こういう反応をする者が絶えない。
こっちは誠意をもって真っ向から挑んでいるのに、それを受け止めずに笑いものにするなんて、本当に最低のヤツらだ。
もう、仲間に話しかけて逃げるの禁止!
接客のプロなら、逃げずに一対一で向かい合ってみろってんだ!

ちなみに高級ホテルでも、客がタバコを吸いながら廊下を歩き、タバコを持ったままエレベータに乗り込んできたりする。
これがチャイニーズ民度か。

高級ホテルでは、部屋にパソコンが置いてあったりする。
自分のラップトップにLANケーブルを接続してみたら、うまいことネットにつながった。


通常の状態だと、GoogleもFacebookもtwitterもYouTubeもブロックされていてアクセスできない、このブログもアクセスできないので、VPNを使用する。
VPNとは、正確にはブロック解除ではなく、中国以外の国のサーバーを経由してネット接続させる方法。
有料や無料、モバイル用アプリなど、いろいろある。
中国やイランでFacebookをやっている人は皆、この類を使用しているはず。
ただし、国外を経由するのでスピードは遅い。



マジかよ中国。
晴天日の舗装道路で、なんでこんな水没してんだよ。



クラクションも次第に激化。
そうだよな、中国人がクラクションを鳴らさないわけがないよな。
GDPが世界2位になっても、一人あたりのGDPが低い国では、結局クラクションを鳴らすんだよ。

ただし、中国の一人あたりのGDPは絶賛上昇中で、現在84位。
日本の一人あたりのGDPは絶賛下降中で、現在24位。



中国の人口密度は140人/k㎡。
世界最多人口とはいっても、過密さは日本の半分以下。
ただし、一人っ子政策にもかかわらず複数の子を産んでしまって届け出せずに存在しない者とされている黒孩子や浮浪民が2億人はいると推定されている。
実際の人口が15億だとしても、それでも人口密度は160人/k㎡ほど。
中国の国土で日本の人口密度(337人/k㎡)と等しくなるには、30億の人口が必要。



この日は一発で宿にありつけたが、駐車場のおっさんとちょっとケンカになった。
よくあること。
どういうわけか駐車場のおっさんというのは、高圧的に偉そうに「ここに停めろ!」と指図してくる。
「ここには停められないな」と判断して別の場所を探していたら、ベトナム人と同じように「オイッ! オイッ!」とヒステリックにわめく。

うるっさいなー。
なんでそんな声デカイんだよ。
本当に動物同然、イヌと何ら変わりないな。

おっさんは力いっぱい自転車をつかんで阻止してきたので、僕も力いっぱいおっさんの手首をチョップして払いのけた。
するともう、本当に発狂したかのように騒ぎ出した。
こいつが英語を話せたとしても、僕が中国語を話せたとしても、こんなんじゃ会話が成立するわけもないので、レセプションの人にお願いして、建物内のロビーの隅に置かせてもらった。
あんな蛮人が管理している駐車場に大切な自転車を放置するわけにはいかない。

久々のショッピングモール。


こういうのはチャイニーズクオリティか。




言葉で苦労するとはいっても、日本人は文字を見てだいたい推察できるから楽だ。


麺類は豊富にあるが、この辺はうどんスタイルが主流のようだ。


ウイグルでハマった拌面は西部の食文化なのか、この辺では見ない。
あれウマかったんだけどなー。

店の看板を見れば何の店なのかだいたいわかるし、通りには漢字で名前が付いているので街歩きの際の目印になるし、宿にある電気製品のリモコンもボタンがすべて漢字。
漢字文化圏外から来た旅行者は、数倍苦戦すると思う。



やっぱりタイと中国って、共通点があるな。
タイでもこんな感じで、夕方になると広場に人が集まって、おば様たちがエアロビまがいのことをやっていた。




Yangjiang, China

16770km



2 件のコメント:

  1. お久しぶりです。
    中国入国後更新が滞ったのはやはりネット規制の洗礼を浴びたからですか?
    ブログ読んでていつも思うのですが、人って部外者に対して寛容なのかどうか分からなくなります。

    有空房間ma? 部屋は空いてるか?
    単人間。シングルルーム
    有更便宜的ma?もっと安いのはないか?

    香港まで半分以上近づきましたね。
    そこまで行けば英語の通用性は格段に上がるでしょうね。

    返信削除
    返信
    1. お久しぶりです。

      ランク高めのホテルに泊まっても必ずしもネットができるわけではないですね。
      名前と電話番号を入力してログインしないとネット接続できないホテルが多いです。
      最近はブログの下書きを書く時間が長く、写真より文字が多くなり長文になってしまいます。
      そしてグチが多くなってしまいます、すみません。
      ネット接続できてもVPNだと遅すぎて捗りません。
      今いるホテルはなんとか接続はできてますが、写真と動画のアップは諦めました。

      旅をしていると、人種や民族の性質をじかに感じ取ることができますが、アジア人は全体的に、部外者に対してclosedですね。
      白人や黒人はまったく違いました。
      「同種/異種」の区別・差別はどの社会にもあると思います。
      問題は区別・差別があるかどうかよりも、どういったスタイルで部外者を区別・差別しているかで、その民族性が見えてくる気がします。

      中国は国土広いし人口多いので、進むにつれて民族性が変化してきたりしたら面白いのですが。
      今は、英語を話す中国人というのが想像できません。
      しかし中国語、発音難しいですねー。



      削除