2014年6月11日水曜日

ホーチミン 1

ベトナムに入国。

多くの国籍がビザを必要とされ、しかもビザ代は高額で、取得するのにストレスを伴うらしい。
幸い、日本は数少ないビザ免除国のひとつで、15日滞在許可。

イミグレーションには十数人の越境者がダルそうに待機しており、対応している係員は1人だけだった。

バス移動の団体さんの直後に来たりしたら相当待たされるだろうな。
建物の周囲でたむろっていた者が、「5ドル払えば優先させてやる」と言ってきたが、もちろん断った。
やだやだ。

係員は仏頂面で、スタンプを押し終わったらパスポートを放り投げるようにして雑に扱っていた。
やだやだ。

少々の不快感はあったものの、問題なく入国完了。

その辺にいたおばちゃんが両替を申し出てきた。
ちょっと警戒したが、レートはノーマルで、偽札でもなさそうだったので、両替した。

ベトナムについて。

歴史的には中華文化圏だが、1887年にフランスの植民地となり、第二次大戦中は日本とフランスの二重支配、大戦後の1945年にホー・チ・ミンを主席とするベトナム民主共和国として独立した。
独立後に再びフランスの植民地となったが、ベトナムはフランスを相手に第一次インドシナ戦争を起こし、1954年に勝利した。
フランスの後を継いだアメリカは、ソ連・中国の社会主義勢力の南下を阻止するため、ベトナムを南北に分断し、南ベトナムを建国した。
1960年に「南ベトナム解放民族戦線」(通称ベトコン)が結成され、アメリカに戦線布告して第二次インドシナ戦争が起こり、1965年にアメリカが北ベトナムを爆撃し、ベトナム戦争が勃発した。
「アメリカ・資本主義陣営 VS ソ連・社会主義陣営」の冷戦を背景とする代理戦争でもあったベトナム戦争は長期化、泥沼化し、300万人のベトナム人と6万人のアメリカ人が死んだ。
アメリカはこの戦争で785万トンの爆弾を落とし、7500万リットルの枯葉剤(ダイオキシン)をばらまき、ベトナムの国土を破壊し尽くした。
アメリカの世論は反戦に傾き、政府もこの戦争が第三次世界大戦を誘発するリスクを考え、次第にアメリカの撤退が濃厚となっていった。
1975年に南ベトナムの首都サイゴンが陥落したことでアメリカの敗戦が決定し、1976年にベトナム社会主義共和国が成立して南北が統一された。
1978年にベトナムはカンボジアに侵攻して第三次インドシナ戦争を起こし、ポル・ポトを追放した。
ポル・ポトを支援していた中国がベトナムに報復すべく、1979年に中越戦争が起こったが、戦闘慣れしていたベトナム軍に歯が立たずに1ヶ月で撤退した。
無敗のベトナムであったが、世界各国は援助を停止し、孤立した。
90年代になって中国、フランス、アメリカと和解した。

ベトナムの国際的なイメージは悪くなさそうだ。
戦争好きの最強国家アメリカに勝利したこと、枯葉剤の影響が今もなお残ることへの同情。
近年は南シナ海の領海をめぐって中国と対立しているが、強大な国家からの侵攻にも屈することのない小国家ベトナムの肩を持つ人が多そうだ(特に中国はどうしようもないほどイメージが悪いということもある)。

しかし、ベトナムは社会主義国家。
共産党の一党独裁で、民主化運動や反政府運動は弾圧される。
メディアは国営で、政府の意志に従って情報操作、言論統制がなされている。
「報道の自由度ランキング」では、世界でもワースト10に入る。
近年はインターネット上での規制、弾圧が強化され、逮捕者が続出している。
2013年には、ブログで政府を批判した女性ブロガーが警官に襲撃され、意識を失うほど殴打されたという。

経済に関しては、1986年からのドイモイ政策で市場経済が導入され、国外からの投資が高まって好調な経済成長を維持している。

こういった政治経済の形態を見ると、ベトナムも中国と大差ない。

ベト人90%、華僑3%、他に53の少数民族。
仏教80%、キリスト教9%。
公用語はベトナム語。

ベトナムも右側通行。

車よりもバイクが圧倒的に多いためか、広いバイク道がある。

田舎街にも、こぎれいなスーパーがある。

カンボジアとは違うな。

マレーシアやタイに劣らないぐらい発展しているように見える。
しかし、クラクション社会。

そして、聞きしに勝る二輪大国。


見通しの良い広々とした直線道路を走行中、突然背後から、バイクに追突された。
転倒。
バイクは止まることなく逃走。
周囲の多数のバイクも、誰一人として気にも留めず、倒れた僕をよけて流れていった。

今までさんざん自転車こいできたが、まともな交通事故は一度も経験したことがなかった。
これも軽い事故だが、けっこうな衝撃を感じるものだ。
でも、怪我はない。

自転車・・・
大丈夫か!?

ハンドルとブレーキレバーがひん曲がってしまったが、六角レンチで修正できた。

バッグが2つほど吹っ飛んでしまっていて、通行人がそれを拾ってくれた。
軽い事故とはいえ、一応事故だと思うのだが、ベトナム人がしてくれたのはそれだけだった。
通報?
するわけない。
ここは日本じゃない。

もし重症を負っていたら、誰かが助けてくれるまで、僕はどれだけ待つことになっていただろう?

それにしてもあのバイク、腹が立つ。
おそらく、単純なよそ見運転。
そして、こちらをチラッと振り返っただけで安否の確認もせず、そのまま逃走。
最低の人間だ。

国境から70kmほど、最大の都市ホーチミンに到着。










周知のように、この街は以前はサイゴンと呼ばれていた。
1954年から南ベトナムはアメリカの支配下にあったが、ベトナム戦争終結を決定づけたサイゴン陥落の後、1976年にホーチミンと改名された。

この人がホー・チ・ミン。

建国者であり、ベトナム共産党の創設者。

これがかの有名なアオザイか。










この人たちは日本人だろうか。






























バイクが視界に入ってこない風景はないでしょうか?

ありません。



赤信号で停止しているのは30秒。
わずか30秒でこれだけたまる。



青信号も同じく30秒。
つまり、1分ごとにこの大群がまるまる入れ替わっている。



歩行者や自転車のマークが点灯する信号なら見たことあるが、これは初めて。




よく聞く話だが、ベトナムではバイクのことを「ホンダ」と呼ぶらしい。

ホンダホンダホンダホンダホンダ・・・・・


しかしこれでもなお、日本の方が人口密度が高い、というのは信じたくない事実だ。
ベトナムの人口密度は253人/k㎡、日本の人口密度は337人/k㎡。

ベトナムの国土は日本の0.8倍、人口は9170万人。
面積も人口も日本と大きな隔たりはないが、 交通手段がこんなにもバイクに偏ってしまっているのはどんな理由があるのだろうか。
単に鉄道や地下鉄の整備が遅れているというだけだろうか。
他にも何かある気がする。

一見すさまじい交通量だが、車よりバイクを普及させた方が渋滞しにくい、というのはたしかだ。
どこの国でも、大都市を走行する時は渋滞に巻き込まれたりバスやタクシーや路駐車に進路を阻まれたりして大変なのだが、今回は流れが良く、意外にすんなり着いた。
一方で、事故が多そうだ。
すでに二度三度事故を目撃したし(かれらはそれを事故と認識していないかもしれないが)、自分自身も事故った。



今まで見てきた国にはない、異様なセンス。



冷戦は資本主義の勝利で終わった、と思う。
東欧や中央アジアなど、かつてソ連の傘下であった旧共産圏諸国の荒廃っぷりも見てきた。
しかし、ベトナムにはそういった敗北感がない。
だって敗北してないから。
今後も社会主義を貫き通すことに一片の迷いも感じさせない。
国民はどう考えているのだろうか。








Ho Chi Minh, Vietnam



7 件のコメント:

  1. 数年前にヘルメット着用義務化されて以前より(何が?)マシになったらしいです。
    若者にとってバイクはモテ必須アイテムらしいです。

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    1. モテ必須アイテム!?
      たしかに今まで見てきた後進国では、車やバイクを所有しているということはけっこうなステータスのようで、そういった意識が車優先社会の形成につながっているのでしょうね。
      自転車なんぞは乗り物ヒエラルキーの最下位で、蔑視されることもあり、経済力があるのに自転車で旅する外国人は、かれらには不可解のようです。

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  2. 入国早々とんだ災難だ…

    しかも無視して逃げるとは、何事だ。
    許せんな。
    自走可能で大きな怪我がなかった事が不幸中の幸い。
    某旅番組で、カブによるベトナム縦断をやってが、危なかった。
    気をつけていても追突されたが、用心に越したことはない。
    ハンドル等買えるのか?

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    1. 後ろからの追突は気をつけようがないよな。
      もちろんこっちは急に進路を変えたわけでもないし急ブレーキをかけたわけでもない、ふつうにまっすぐ走行してた。
      当たり前のように逃げてしまうのは、この程度の事故じゃ誰も追跡してこないし責任追及もされないし、まして通報なんかされない、っていうのが常識となってしまってるからだろう。
      旅行者と出会って話をすると、いつもきまって治安の悪さや政治情勢が話題になるけど、自転車旅行者にとっての最大の気がかりは、やはり交通事情。

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  3. お久しぶりです!
    ベトナムの交通事情がこんなに劣悪だとは・・・亮さんが無事で何よりです。
    彼らは運転の前にマナーを学ぶ必要がありますね。

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    1. たしかに、当て逃げでは苦い思いをしたし、許せないと思う。
      でも、ふつうに街を歩いている分には、バイクは歩行者をスイスイよけてくれるし、意外にイージー。
      必ずしも日本や先進国のルールが基準になるわけではない、どこの国にもその国なりの秩序が成立している、と旅をしていつも感じている。

      運転の危険度(マナーとはまた少し違う、身の危険を感じさせる運転の荒さ)に関しては、
      1位 ブラックアフリカ
      2位 中南米
      3位 中央アジア(トルコあたりまで含む)

      反射神経に自信のない人は、これらの地域は旅行しない方がいいと思う。

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    2. 確かに国ごとに秩序があるかもしれませんが、誰かにぶつかったら謝るということは万国共通の認識であってほしいと思ってます。

      ・・・ブラックアフリカという言葉を初めて知りました!

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