2012年2月6日月曜日

シナイ

ナイル川とおさらばして東へ向かうとやはり砂の世界。




この日は素晴らしい追い風だった。
道はフラットで、広くて
障害物もなく、後半はこがずに乗ってるだけで30km/hの快走。
午後1時半には、カイロから140km離れたスエズの街に着いた。
日没までみっちり走行していたら、軽く200kmは超えていただろう。

スエズ運河を渡るには、僕が調べた限りでは、1本の橋と1本のトンネルしかない。
ルートの都合上
トンネルで。


しかし
トンネル内は自転車の通行は禁止。
車をつかまえて乗せてもらうしかない。

軍の人が車をつかまえてくれる。


やけに気さくで親切な人たちだった。
エジプトは徴兵制なので
かれらは軍人というよりたまたま兵役中の若者、だと思う。

なかなかつかまらないので
皆で朝食。


 
僕の分も用意してくれた。
具だくさんで、今まで食べたエジプシャンフードで一番うまかった。
サンドイッチにポテトチップスを入れるところが斬新だった。

ところで先日、パン屋経験のある友人から、エジプトの主食であるアエーシはパンの起源であろう、という指摘をもらった。
たしかにパンの起源はエジプトで、BC25~24世紀にすでにパンをつくっていた記録がある
ようだ
エジプト人は、現在にいたるまでその原始のパンをほとんど進化させていないのかもしれない、とその友人は言う。
僕が今まで食べていたのは原始パンだったのか。

パンといってもふっくら感がまったくなく、パンっぽくない。
半分にちぎって開くとポケットのようになる。


ポケットに具を入れてサンドイッチにする。


このアエーシは、サンドイッチとして使うために存在するもので、これだけを単独で食べるのは厳しい。
バターやジャムも合わないだろう。
同じアエーシでもスーダンのアエーシはパンらしく、バターやジャムでもいけた(スーダン人はそういう食べ方をしないだろうが)。

エジプトのレストランは、このサンドイッチスタイルか、コシャリ(炭水化物ミックス)の二通りぐらいしかないので、飽きてしまった。
最近は、ガスも手に入れたことだし、久々に自炊を再開した。

ちなみに、ビールやワインもエジプト起源。
現在世界的に使われている太陽暦も、エジプト起源。
西洋学問の起源は古代ギリシャだが、その古代ギリシャ人も、元々はエジプト人から教わることが多かったという。
ピラミッドばかりに目が行きがちだが、エジプト文明の功績は多岐にわたる。

話がそれまくってしまったが、ようやく車をつかまえて、トンネル突入。

トラックの荷台は家畜のフンだらけだった。

トンネルをくぐったので、運河を間近で見ることはできなかった。
遠方からのズームで勘弁してください。


スエズ運河は1869年開通、全長193km、インド洋と地中海を結ぶ重要な航路となっている。
橋は五洋建設、トンネルは鹿島建設がつくった。
日本人として誇らしいが、どうか自転車も通れるようにつくってください。

運河の南方は紅海。








きれいだ。







誰もいないビーチで、ひとりたそがれた。






遺跡はないが、サイクリング的にはナイル川よりこっちの方が断然いい。



紅海はぜんぜん赤くなかった。



こんなゴージャスなホテルが80ポンド(960円)なんて信じられますか?
 
テレビ、エアコン、冷蔵庫付き。

バルコニーから紅海が見える。









  
 




  
 





車が途切れた時の静寂がたまらなく好きだ。
人工的なノイズがまったくない。
でも車がやってくると、すれ違いざまにクラクションを鳴らしやがる。









スケールがでかくなるほど、写真じゃ伝わらない。
広大な砂漠、地平線、海。
映像も言葉も、なんともむなしい。















シナイは、今まで見てきたエジプトとはだいぶ雰囲気が違う。
ぼったくりも、がめつい人もおらず、悪ガキにからまれることもない。
単に人口が少なくて観光地でもないから悪人に出会うことが少ないだけなのかもしれないが、
シナイは中東戦争でイスラエル領だった時期があったということと、現在はパレスチナ難民が多く住んでいるということも関係しているかもしれない。

シナイ半島の南部中央に、モーセが十戒を授かったといわれているシナイ山がある。
このシナイ山に登るつもりだったのだが、西側からシナイ山に通じるルートが閉鎖されていた。
東側のルートは開いているようで、もし行くなら東側にまわりこんでから内陸に入らなければならない。
そうなるともう面倒で、行く気失せた。
海岸沿いに半島を一周するだけにしておく。

なぜ閉鎖されているのか警察に聞いたら、強盗が出没するからだという。
しかし、強盗が出没するからといって道路を閉鎖するだろうか?
ヒマそうにしている警官や軍人がたくさんいるのだから、かれらを治安維持に当たらせればいい。
本当は、別の理由がありそうだ。

シナイが危険地帯であることは事実で、昨日泊まったシャルムイッシェエーフという街では2005年の爆弾テロで64人が死亡、今
るダハブでは2006年の爆弾テロで24人が死亡した。
このふたつの街は
エジプトらしからぬリゾート地。
特にシャルム
イッシェエーフはユダヤ人がつくった街なのか、ビーチ、バー、カジノ、ショッピングモール、ゴージャスすぎるホテルなど、イスラムとは相容れない雰囲気だった。
僕もビーチリゾートは苦手で、気分悪くなった。
今いるダハブは
比較的こぢんまりとしていて静かで、それほど悪くない。


Dahab, Egyptにて

Dst. 11794km



4 件のコメント:

  1. アエーシ美味そうだ・・・

    エジプトは、4大文明であり世界の文化起源があるのかもしれない。

    カイロを離れるとやはり世界が一変するな。
    紅海の風景が良い。
    あのビーチで読書しながらコーヒーを飲んだら至福の
    時であろう。

    強盗に気をつけてな。

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    1. 古代エジプト人と現代エジプト人のギャップにうちひしがれる毎日。
      車だったら素通りしてしまうような誰もいないビーチで立ち止まってひとときをすごす、というのも自転車ならではだ。
      もっと透明度の高いダイビングスポットがたくさんあるようだが、サイクリストはこれでいい。

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  2. いやー写真がきれいで、自分がそこにいるような・・・
    事故に気を付けて頑張ってください。俺も何年後か世界自転車旅行に出たくなってきました。一旦仕事を捨てて10年ぐらい旅するのも悪くない人生だよね。まずは貯金!

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    1. ありがとうございます。
      なかむらさんが自転車旅行するなら、応援、バックアップを惜しみませんので、その時はぜひとも連絡ください。
      誰よりもアフリカや世界情勢に詳しいなかむらさんが自転車で旅しつくしたら最強でしょうね。

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